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秋茄子とスモークサーモンのタルタル サラダ仕立て

5 時間前
読了時間: 6分

秋のコースでお出ししている前菜の一つに、

「秋茄子とスモークサーモンのタルタル サラダ仕立て」

があります。

秋になると、やはり使いたくなる食材の一つが茄子です。

夏の茄子ももちろん美味しい。実際には、夏と秋で水分量が大きく変わるというよりも、品種や生産者、栽培方法による違いの方が大きいと思っています。

それでも「秋茄子」という言葉には、季節そのものを感じさせる力があります。

料理というのは、本来、季節に合わせて作るものです。

夏になればキュウリやトマトが出てきて、冬になれば根菜が美味しくなる。

旬の食材を使うことで、料理の中には自然と季節が入ってきます。

料理人の仕事は、そこに無理やり季節感を付け加えることではありません。

その食材が、より美味しくなるように手を加えることだと思っています。

直火で焼く理由

今回使っているのは千両茄子です。

普段、茄子の中に詰め物をする料理を作るときには、一度油で揚げてから皮を剥くこともよくあります。

揚げると全体に均一に火が入りやすく、中をとろっとした状態に仕上げやすいからです。

けれど今回は、あえて直火で焼いています。

皮が焦げるくらいまでしっかり火を当て、焼き上がったら皮だけをきれいに剥く。

ヘタは残したまま、中央に切れ込みを入れて少し開き、その中に詰め物をします。

今回、直火を選んだ一番の理由は香りです。

皮を焦がして焼くことで、茄子そのものに香ばしい香りが移ります。

そして、その香りに合わせるために考えたのが、自家製のスモークサーモンでした。

スモークサーモンと柿

サーモンは塩、香辛料、香草で3日ほどマリネします。

その後、冷蔵庫の中で表面をしっかり乾かしてから、火を入れずに冷燻します。

表面に水分が残ったまま燻製をかけると、煙の香りがきれいに付かず、酸っぱいような匂いにつながることがあります。

ですから、触ったときに表面が少し乾いているくらいまで水分を飛ばしてから燻製にかけます。

スモークしたサーモンは小さな角切りにし、エシャロット、ディル、セルフィーユ、ケッパーを合わせます。

さらに加えるのが、秋の果物である柿です。

スモークサーモンには塩味があり、ケッパーやレモンには酸味があります。

そこへ柿の甘味を加える。

そしてアボカドを少し入れることで、酸味や塩味の角を滑らかにつなぎます。

柿には季節感を出す役割がありますが、それだけではありません。

塩味、酸味、甘味のバランスを作るためにも必要な食材です。

一皿として食べたときのバランス

焼いた茄子の中に、このスモークサーモンのタルタルを詰めます。

その上にはキャロットラペをのせます。

人参を千切りにし、塩と少量の砂糖で水分を出し、軽く絞る。

そこへビネガー、ブラッドオレンジジュース、コリアンダーパウダーを加え、3日ほどマリネします。

焼き茄子も、スモークサーモンも、アボカドも、比較的柔らかく、ねっとりとした食感を持っています。

そこにキャロットラペのコリコリとした食感を入れることで、一皿の中にアクセントが生まれます。

さらにトマトのコンソメゼリーを合わせます。

これは最初から考えていたものではありません。

実際に作りながら食べてみたときに、茄子、サーモン、アボカドと、口の中に少し重さが残る食材が続いていたので、それをすっと切ってくれるものが欲しくなりました。

たまたま別の料理で使っていたトマトのコンソメゼリーを合わせてみたところ、酸味と瑞々しさが全体をうまくつないでくれました。

最後に、塩、胡椒、ビネグレットで軽く和えたミニリーフをのせ、パルメザンチーズを削ります。

私はこの料理を「サラダ仕立て」と呼んでいます。

キャロットラペやミニリーフまで含めて、私の中では一皿のサラダだからです。

秋の野焼きの記憶

今回の料理は、まず「秋になったから茄子を使いたい」というところから始まりました。

そこから、私の中にある秋のイメージが少しずつ重なっていきました。

秋の色といえば、私の中ではオレンジ色があります。

そこからサーモンが浮かびました。

そして、もう一つ浮かんだのが煙の香りです。

私は、家の周りが田んぼで、その先に山があるような場所で育ちました。

秋になると稲刈りが終わり、稲藁や草を焼く煙の匂いが漂ってくる。

その香りを嗅ぐと、

「秋になったな」

「少し気温が下がってきたな」

「もうすぐ冬が来るな」

そんな感覚が、今でも自然に浮かびます。

直火で焼いた茄子の香ばしさと、スモークサーモンの燻香。

今回この二つを合わせた背景には、そうした自分の中に残っている秋の記憶があります。

ただ、この話を料理をお出しするときにお客様へ説明することは、ほとんどありません。

お伝えするのは、

「焼き茄子にスモークサーモンのタルタルを詰めた、秋の前菜です」

それくらいです。

まず「美味しい」でいい

料理を食べる方すべてが、料理評論家でも美食家でもありません。

料理人が何を考え、どんな記憶からその料理を作ったのかまで、全員が知りたいわけでもないと思います。

求められていないのにそこまで説明すれば、それは料理人側の考えの押し付けになってしまうこともあります。

ですから、まずは単純に、

「美味しかった」

そう思ってもらえれば十分です。

その中で、

「あ、秋茄子なんだ」

「柿も入っているんですね」

そんな小さな気づきがあり、結果として秋を感じてもらえれば、それでいいと思っています。

一方で、こうした記事を書くのには理由があります。

言葉にしなければ、料理の背景にあるものは一生伝わらないからです。

記事は、読むことを強制するものではありません。

料理や店に興味を持った人が、自分で選んで読むものです。

何度も通ってくださるお客様や、もっと料理について知りたいと思ってくださる方には、普段の短い料理説明だけでは伝えきれない部分まで知ってもらえたらと思っています。

「茄子の域を超えている」

この料理をお出しすると、ときどき、

「もうこれ、茄子じゃないですね」

「茄子の域を超えていますね」

と言われることがあります。

もちろん、茄子じゃなければ困るのですが。

ただ、この言葉は私にとっては、どちらかというと嬉しい感想です。

茄子の存在がなくなっているわけではありません。

焼いた茄子の香りや、とろっとした食感はきちんと残っている。

そこへスモークサーモン、柿、香草、ケッパー、エシャロット、キャロットラペ、トマトのコンソメゼリー、チーズが重なり、一緒に食べたときに一つの料理になる。

茄子だけが突出するわけでもなく、スモーク香だけが前に出るわけでもない。

塩味、酸味、甘味、香り、食感。

そのすべてが調和したところに、一皿としての美味しさがあります。

Restaurant EQUILIBREの「EQUILIBRE」は、調和やバランスという意味です。

何か一つを強く主張させるのではなく、すべての要素を、自分が美味しいと思えるところまで整えていく。

今回の秋茄子の前菜も、結局はその繰り返しでできています。

旬の食材を使い、その食材がより美味しくなるように手を加える。

そして食べた人に、

「美味しい」

と感じてもらい、その中に少しだけ秋を感じてもらう。

料理人として、それで十分なのだと思っています。


 
 
 

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